Bloodstained: Ritual of the Night (Steam)

時効と判断して書くが、一時期あるツテで知り合ったスマホゲーのプロデューサーとよく遊んでいた頃があった。その人の肩書及び役割からか交友関係が広く、大手ゲーム会社からキャリアのあるV系バンドまで多彩なつながりがあり、よくその人達と飲みに行かないかと誘われたりしていた。私個人は彼等のファンであったり或いは興味があったりで会話してみたい向きは多々あったのだが、何よりも自分自身が彼等にとって特にメリットのある立場では無かったことから殆どは謹んでお断りしていた(何故かこうしたケースが今尚たまに発生するのだが、根本的に自分自身が対外的に何かしらの有益さを齎すとは一つも考えていないので、相手にとって無意味な交流が発生しないよう日頃から極力心掛けている)。
その顔触れの中にIGA氏も居たので、件のシリーズの新作を企画しているのかと軽く尋ねてみたところ、K社がスマホゲーに傾いてしまい最早コンシューマーでああした2.5Dのゲームは作れないし、携われるプログラマーやグラフィッカーも居ない、とこっそり教えてくれた。その後プロデューサー氏と一緒に飯がてらK社スタッフと引き合わされた機会が何度かあったが、矢張り同様のことを話してくれた。『Harmony of Despair』がリリースされてから二年ぐらい経っていた頃の話だ。これらの証言だけでも、納得いかない真祖がK社から独立した経緯は想像するに余りある。
その二年後に、この『Bloodstained: Ritual Of The Night』のKickstarterでのクラウドファンディングが募集された。脊髄反射で出資したのは言う迄も無い。そして更に三年が経ち、プロジェクトが途中で失敗することも無く、2019年に晴れてSteam/PS4/Switchのマルチプラットフォームで正式にリリースされたのだ。

……という、他所では余り馴染みの無いどうでもいいエピソードはここまでで、後は個人の所感がつらつら記述されているだけなので、何かの間違いでこのページを見てしまった諸氏に於かれては解散されたい。より良い内容を求めるならIGN Japanの迫真のレビューを見るのが一番良いので、そちらをお勧めする。私も大筋同意見だからだ。内容についてわざわざ此処で書く必要も無いぐらい、立派な、『月下の夜想曲』の系譜を受け継いだ、余りに立派過ぎるゲームだ。

敢えて補足するなら、このシリーズが好きなゲーマーにとっては最早当り前過ぎて余り気にしていない天地逆マップの破綻の無さを挙げておきたい。今回久々に天地逆仕様が盛り込まれた。逆さ城のようなマップ拡張では無く、ゲーム途中での移動範囲拡大の措置としてそういうシャード(インバート)が供給される。本来なら天地逆にした場合の地形にハマリポイントが無いか、それはもう血眼になって各種移動条件を揃えて丹念にマップ中をフィールドワークするような地道且つ膨大な工数が必要とされる訳だが、そのシャードがあれば何時でもスイッチ可能にさせることによってそれを巧く省略している節が窺える。勿論スイッチすれば何処でも行けるようになってしまうのかと言えばそうでも無く、ポイント毎に然るべき手順を取らなければ入場不可能な仕組みを設けて安易なショートカットとレベリングの齟齬を回避している。移動範囲の拡大や移動のマンネリズム阻止といったプレイヤー側へのUX提供、作業ステップを巧く省略した開発側の効率化の両者が垣間見えて、正直これは見事だと思った。惜しむらくは、もう少し後になってから例の無限ジャンプが可能になるのでつなぎ程度の代物になってしまっていることだろうか。
無限ジャンプに関してはこれまた終盤で、全ての地形と敵が二倍サイズになっている巨獣区があり、此処でフル活用出来るようになっている。何れに於ても移動の自由度と制約からの開放感といったカタルシスを存分に得られる仕様で、この絶妙な気持良さ加減もしっかり継承・拡大されていた。

また、誰が見ても判る諧謔についてはしっかり触れておくべきだろう。剛力の鍵を必要とする小部屋(静寂の庭園)にレヴナントという中ボスが存在する。その名の通りゾンビだが、シリーズ中で最もよく知られたベルモンド一族の姿そのもので、一本調子で動き、鞭を振るい、間接武器を投げてくる。ゲームタイトルという資産、それを最も資産たるものとして作り出せるスタッフの職人性を把握出来ない一族経営陣に対する皮肉を、あくまでゲーム内の範疇で、且つレヴナントとして表現することの諧謔精神と品行方正さは広く語られるべきだろう。作品を通したクリエイターの主張としてあるべき表現だ。

PS3以降は据置き筐体を一切買っておらず、PCでもゲームをやっていなかった。今回初めてPC版Steamをインストールし、八年前からずっとPCI-Eに刺さった儘だったGeforce 9800GTの時代遅れさ加減に気付いて慌ててグラフィックボードを新調する、といったぐらいにはハイスペックなコンシューマー/PCのゲームをやっていなかった訳だが、久々に触れてみて、楽しいな、とつくづく実感した。それもこれも、本作が「顧客が本当に必要だったもの」を忠実に把握し作り上げられたからだろう。これでいいのだ。お陰様で実績フルコンプの称号「魔王」(Steamでのグローバル実績では2019-10-23現在まだ6.8%だ、みんな頑張れ)を早々に獲得する程度にはプレイに勤しんだ。

 

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初回プレイ中での武器とシャードの組み合わせは以下が快適だった。『月下の夜想曲』に於けるヴァルマンウェ並びにシールドロッド+アルカードシールドの組み合わせのようなものだ。エイミングシールドの攻撃力は弱いが、ボス本体の接触以外は何でも防ぐし、出血するタイプの敵に当てればブラッドスティールで回復し放題になる。相当雑に戦っても死なない。ゲームプレイに於ける個人的な好みがシームレスに動けることを第一としているので、例えば「大剣のモーションラグを解消する為にジャンプしながら連打する」等の歯応えが全く足りていないことは否定しない。ボスラッシュモードで真面目に戦うとつらくなることも承知だ。しかし武器やアイテムの選択によって極めて能動的に難易度を変えていけるのもIGAVANIAの特長である。先へ進めたりアイテム蒐集に勤しむのなら、チートレベルで強くなる組み合わせにして快適な操作性を得られる方が良いのだ。
とは言えボス戦に対する下記の組み合わせはぶっちゃけチートが過ぎる。ノーダメージメダルを獲得するのも余裕なぐらいには。相手が真祖ですら、難しく考えなくてもノーダメージキルが可能だ(O.D.に関してはアクセラレイターで一瞬だけ部屋に入って脱出すると会話中に攻撃出来る裏技がある)。2周目以降のフルコンプ作業ならこれをお勧めしたい。

武器: ルァハ・バラル/ルァハ・ヴェラー
トリガーシャード: ブラッドスティールまたはグレイトフルアシスト
ディレクショナルシャード: エイミングシールド
エンチャントシャード: オプティマイザ
あれば尚良い:ジーベルのメガネ

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そう、『月下の夜想曲』以降のIGAVANIAの楽しみはクリア後にある。武器やアイテムや図鑑のコンプリートだ。その為の稼ぎ場所は幾つかあり、その殆どがワープ部屋のすぐ隣だ。アクセラレイター×9+ルァハ・ヴェラー前提。シャード獲得100%で得られるジーベルのメガネがあれば尚良い。

  • 禁忌地下水洞: 蝙蝠×5と燭台×3を潰してゴールドを拾い、グラシュテインを倒してワープ部屋に戻る。5分も繰り返せば3~5万Gになるし、時折落とすアイムールは解体すると金(素材としての)を得られる。砂漠の宝箱を片っ端から開けていくよりも余程効率が良い。
  • 東洋魔導研究棟: 長い部屋だが往復すれば、ニンジャが忍装束とヒヒイロカネを、ハーゲンティが魔牛の羽根を、デストラップがマホガニー材を落とす。忍装束もマホガニー材も高値で売れるので資金稼ぎにもなる。
  • 灼岩炎窟: ファイア・エレメンタルがルビーとビクスバイトを、デストラップがマホガニー材を落とす。
  • 永久氷棺: アイス・エレメンタルがサファイアとダイヤモンドとアレキサンドライトを落とす。O.D.の部屋の右隣でアークデーモンを倒すと魔王の心臓、更にその右隣でGアックスアウトサイダーを集中して倒すとオリハルコンが稼げる。
  • 魔が駆ける橋梁: 改札の前の長い廊下で、往路は首刈り兎の尻尾を稼ぎ、復路で燭台×8からゴールドを得る。
  • 長者の部屋: O.D.を倒してアクセルワールドを所持しているなら、奥義のコンプリートは此処で。防御カウンター系の奥義は直下の部屋で、アックスアウトサイダーが投げた斧に対して仕掛けると非常に合わせやすい。

 

 

音楽面に関して。今回は流石に山根ミチルが全曲担当とまではいかなかったが、それでも約半数は女史の手に依る楽曲だ。特にこの表題曲、初代ドラキュラのプレイヤーアウトを匂わせるイントロからの立ち上がりは、死んだ資産からの途中復活としか表現しようのない意図を否応無く感じさせる。

『月下の夜想曲』を最も彷彿とさせたディアン・ケヒト大聖堂BGM。月下で言うなら異端礼拝堂。

序盤の城内BGM。メインキャラが女性というつながりからか『奪われた刻印』の廃屋BGMの風情がある。序盤のBGMに関しては毎回シリーズ共通のテイストを保ちつつ少し違ったアプローチを混ぜて新作感を出すような手法が採られていて、『奪われた刻印』が80年代ポップスオーケストラだったのに対して、今回は70年代、なんとポール・モーリアやバート・バカラックの領域だった。ずるい。

リブリ・エクス・マキナBGM。ディアン・ケヒト大聖堂BGMと同様、ドラキュラシリーズに於ける山根ミチルの功績の一つである、部分的にフーガを組み込んだバロック音楽。

ボス戦BGM。月下以降の歴代シリーズのボス戦に準えているが、後半メロウな展開が加わる点が今回新しい。

取引所BGM。女史のキャリアを考えればごく自然ではあるが、シリーズではほぼ作らなかった類のニューエイジ。ヴァイオリンとオーボエのユニゾン箇所は、日本ファルコム楽曲の数々をニューエイジに仕立てた藤沢道雄の作風を連想させる正統派。

月下で言うリヒター・ベルモンドの役回りである兄貴BGM。作曲はノイジークロークの伊藤啓介氏。雰囲気的にはPS2版キャッスルヴァニアに近い。

錬金部屋BGM。上記と同じく伊藤氏。単なるSEと見せかけてしっかりリズムを担っている音素材の数々の入れ方が絶妙。これもちょっと初代感あった。2面かな。

ドラキュラシリーズはゲーム自体もサントラCDも、時間の経過と共に必然的にプレミア化していく。『奪われた刻印』に至ってはゲーム本体が平均一万円、サントラに至ってはゲームの初回特典のみだった為に軽く二万円は超える。だが本作に関しては幸いなことに配信版もある。残念ながらSteam/PS4経由ではあるが、ゲーム業界(特に一族経営のK社だ)に於けるコンテンツ管理が音楽業界以上に保守的且つ雑でありその大部分が名だたるプラットフォームでデジタル配信されていない現状、正当に入手可能なルートが保証されているだけでも充分に意義深い。しかもハイレゾFLACもあるなら申し分無い。ゲームだけでなく、是非音楽単体でも楽しんで頂きたい。

 

Bloodstained: Ritual Of The Night (Steam)

Bloodstained: Ritual Of The Night Soundtrack (Steam)

 

 

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