Radical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind) / King Crimson
2015年高松公演のCD+DVD+BD。クリムゾンの何が好きかと言えば、イイ歳したおっさん集団が懐メロバンドになること無く新しいプログレを演奏していた点に尽きるのだけど、今回の7人編成はなんかもう2/3は懐メロバンドと化してしまっていた。メル・コリンズが合間を縫ってフルートを吹くともう腰が抜けるぐらい懐メロ感が充満して大変にうら寂しい気持に。且つ歌がジャッコなので、フリップが参加した21st Century Schizoid Bandといった様相で以下略。
また今回のクリムゾンはトリプルドラム編成で、デイヴィッド・シングルトン曰く「ドラマーが前に居ることが当たり前であって他のバンドが間違っている」のであり、三人をフロントに配置することが「天才的な発想」らしい。ライヴ至上のバンド(ロバート・フリップが再びライヴをやりたくなったが為のバンド)が目的であれば、アクセントとしてそれもまた良しと言えるが、新クリムゾンの作品としてエポックな要素を主張する面に於ては、トリプルドラムで何をするか、何が出来るか、という点が殆ど唯一と言って良い程残された伸び代であったので、現段階で三名ならではの音楽的な発展が無いとなれば余り意味は無い。当初は静観していたものの、「The Hell Hounds Of Krim」や「Banshee Legs Bell Hassle」のように、だからどうした、V-DrumからOctapadに変わったから何なのだ、と突っ込みたくなるぐらい鈍(のろ)いユニゾンで決まりきった叩き方をする程度を見聞きする限りでは、1994年のダブルトリオ編成でも充分だったとしか言えない。
と、一通り今日に至る迄の疑問とdisを投げたところで持ち上げフェーズに入る。流石、やっぱりいいなという点も多々あり、只単なる懐メロバンドの演奏程度には留めない工夫が随所にあった。その面でのトリプルドラムの視覚的な飽きの来なさは良いし、BPM低めとは言えよく合うなと感嘆するレベルでもある(あの奔放なビルブラ先生に合わせてきたマステロットの手慣れてる感じが特に)。メロトロンのパートはダサいPCMストリングスを使わずしっかり本家の音色を使っていたり、69年当時のドラムの質感を出す為にスネアに布を被せたりといった細部に手が込んでいた。この時代に「Easy Money」や、40年目の現ラインナップにてライヴ公式初出となる「One More Red Nightmare」がこれだけ洒脱になるとは想像してなかった。これはエイドリアン・ブリューで無くジャッコであったからこそであろう。「The Talking Drum」の現行版アレンジもメリハリがあるし、「Larks' Tongues in Aspic Part I」も音的には違和感も無く良い感じだなと思う。『The Elements Tour Box 2014』でのリハーサルや「Venturing Unto Joy」のような勢い(且つ長めの)インプロパートが望めない点では未だに不完全燃焼な印象が残ってしまい非常に惜しい節もあるが。総じてジャッコのヴォーカルがこなれて太く強くなったのが今期大きくプラスされているかと思う。メルが後半のソロパートで各国国歌を吹くのはまあいいです。
あとあれだ、ビル・リーフリン。マルチプレイヤーなこの人がキング・クリムゾンとして前列ド真ん中で叩いている姿だけで充分いい。元々はMINISTRYやLARD(MINISTRY+デッド・ケネディーズのビアフラ)やKMFDMといったシカゴWAX TRAXインダストリアル勢のサポートドラマーだったんだけど、フリップ主催のギタークラフト門下生でもあったところから折に触れてコラボとかしてた末の本流への参画。一時脱退の後、再度復帰もしたようなので、リーフリン贔屓としては嬉しい。
まあそういう訳で、『Live at the Orpheum』や『Live in Toronto 2015』以上の今期傑作ライヴ盤であることは疑いようも無いし、ライヴで活きるバンドなのは理解したし、ドラムオンリーのアンサンブルや「Radical Action」「Meltdown」といった新曲も判ったので、それらを合わせてトリプルドラムの持ち味を活かした変態的な楽曲の登場をお待ちしております。
今年のツアーから毎回1曲を抜粋して無料DL公開しているのでチェックするといいよ
https://www.dgmlive.com/news
Easy Money
King Crimson - Starless
King Crimson - The Light of Day
King Crimson - 21st Century Schizoid Man