Rosa Morta / Craig Armstrong + Scott Fraser

Rosa Morta / Craig Armstrong + Scott Fraser
映画音楽家として『Romeo + Juliet』『The Bone Collector』『Ray』『The Incredible Hulk』『Moulin Rouge!』等々のハリウッド作品を手掛け、マッシヴ・アタックのアレンジで関わったりもしていたクレイグ・アームストロング御大の2016年作品。同郷グラスゴーのベーシストであるスコット・フレイザーとの共作になる。フレイザーとはWinona名義での『Rosebud』を出している他、古くは傑作2nd『As If To Nothing』でもクレジットが確認出来る。

ラテン語かイタリア語かは兎も角『死せる薔薇』とは言うが、ジャケット共々実に鮮やか、使われる音色やフレーズも一々素直且つ煌びやかなので、寧ろ摘んだ直後の生の状態と云った風情である。シンセ主体で表現すると云う制作時の条件を設けたことと、元々のアームストロングの作風ともなればこんな風になるのもさもありなん、ではあるが、各々の軸となる楽器(ピアノ、ベース)を例外とした辺りの妥協が死せる状態の一つではないかと指摘しておく。名作『As If Nothing』のように、ソロ作特有のピアノや生楽器系の音色を媒介としたダイナミックな煽りがあってこそのアームストロング節だと言える。それ故に、いっそのことそれらを一切排した作品を聴いてみたかった、と云う思いが却って強くなった。

とは言え基本的にはシンセを中心に据えているので、全体的にエレクトロニックではある。奇を衒わないソウウェーヴ系の音色を多用している所為か、何処となく70年代後半~80年代前半のヴァンゲリスやタンジェリン・ドリームも彷彿とさせる。実際には各トラック約一日で作られたとのことで、幾分即興に依るスポンテニアスな構築になっている所為もあるだろう(「Marcaslite」「Reverse」は特にその匂いが強い)。これでも即興要素が強いのかという所感も生じるものとは思われるが、要望される条件とシーンに合わせ、且つ調性的に整った楽曲制作が音楽活動の大半を占めるアーティストにとっては、自ら或る程度の枷を必要としてしまう程度には大いなる自由であっただろうと容易に想像し得る。
そして、エレクトロで即興的なアームストロングか、と及び腰になりそうなサントラ好きな諸氏も安心されたい。充分に構造的だしエモい。特に「Crumble」「Landfall」「Dark Light」は笑ってしまうぐらい殆ど何時も通り、ここぞと云う箇所で一々下降クリシェで終止へ持っていくいつものエモさ満載だ。

ふと思ったが、nujabesのようなインストビートに加工すると裾野が広がるのではないだろうか。

 

http://craigarmstrong.com/2016/news/releases/rosa-morta/

 

 

 

 

折角なのでアームストロング傑作選。

ソロ作では最も知られていると思しき「Finding Beauty」。マッシヴ・アタックとよろしくやっていた時期。

映画音楽仕事では最も知られていると思しき『Romeo + Juliet』の「O Verona」

最大級のアームストロング節と言えばああこれだねと言われそうな『The Bone Collector』の「New York City」

本人演奏によるピアノソロ版「Weather Storm」

プリペアードを交えてテクノ的に循環させた「Fugue」

地元グラスゴーの祝典用で作られたソロでのフルオケ作品『Memory Takes My Hand』から「The world shall turn」。最後の「Many」が良いんだけど見当たらなかった。

久々のソロ『It's Nearly Tomorrow』で古参を安心させた(たぶん)であろう「Desole」

ムーラン・ルージュのサントラ仕事。歌はボウイ。

坂本龍一『Bricolages』収録の「20msec.」リミックス

グラスゴー演歌

 

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