Arañas en La Sombra / Ensayo De Un Desaparecido / Omar Rodríguez-López

Arañas en La Sombra / Ensayo De Un Desaparecido / Omar Rodríguez-López
日本国内に於ては専ら「ドドドド童貞ちゃうわ」の空耳(Sleepwalk Capsules)が有名なポストハードコアバンド・At The Drive-Inでデビューし、解散後にヴォーカルのセドリック・ビクスラーとのアフロコンビ・The Mars Voltaを結成して長年強烈なプログレを繰り広げた末に喧嘩して分裂、Bosnian Rainbowsを結成する傍ら、間も無く仲直りしてAntemasqueとして復活したと思ったら何時の間にかAt The Drive-Inとしても復活していた、という、非常に落ち着きの無い遍歴を重ねるテープエコー好き左利きギタリスト、オマー・ロドリゲス・ロペス。
その余りの多作振りにThe Mars Volta時代はレーベルからリリースがストップされてしまい、やる方無い憤懣のはけ口を求め、たかどうかは知らんけど、ソロ名義でbandcamp(一部CD/ヴァイナル)で数箇月置きにリリース。正直聴く方もついて行けない。Antemasqueの活動前後にぴたりと止め、bandcampからも引き上げてしまっていたが、昨年から今年にかけてレーベルを改めてのリリーステロが再発。2016年だけで13枚、2017年に入って11枚分のソロを出している。もうほんとついて行けない。

此処迄の多作であることの弱点として、最早どれを好きに選んで聴いても良い、翻せばじっくり聴き込まなくても良い状況になってしまい、従って各々の作品のプライオリティは相対的に薄れる結果となる。特に多作をこじらせて以降のダブエレクトロ作品は正直余りに暑苦しいので私は大して聴いていない。メヒコの熱砂とでも表現しようか、狂乱のような独特の熱さはオマーの大きな特長の一つではあるのだが、ギターメインであれだけ暑苦しいのに電子楽器メインでも暑苦しいとなるともうどう受け取ったらいいものか判らん。ジョン・フルシアンテとの仲の良さも頷けるマルチタレントとは言え、個人的にオマーに求めている所はプログレであるので、結局そちら系の作品を中心に選ぶ結果になりがちである。今回に至ってはふと気付いたら件のテロも酣で最早真摯に遡る気にもならなかったので、ざっと試聴して琴線に触れた『Arañas en La Sombra』と『Ensayo De Un Desaparecido』を購入。自分の選球眼の余りの判りやすさに自分で笑う。

『Arañas en La Sombra』(spiders in the shadow)はヴォルタっぽさ全開だったので特に何も考えずに購入。聴いている最中に随分と初期のヴォルタ臭さが気になってクレジットを確認してみたら、ドラムがジョン・セオドアでゲストがジョン・フルシアンテなので間違い無く初期ヴォルタでのアウトテイクだった。但しヴォーカルはセドリックでは無くオマー自身が当てている。切り貼りの跡も若干目立つが、「Promotivo y Barbaro」~「Semillas De Hez」、「El Vacío」~「Piojos Histéricos」は特にヴォルタの1stと2ndをつなぐかのようなエモい曲調で盛り上がるので、オマーのソロに興味は無いがThe Mars Voltaは好きだ、という向きの方には全力でお薦めしておきたい。ミックスに関しては何故か30〜120Hz帯が弱く、ベースとキックが完全に後ろへ引っ込んでしまっているので、自分で適度に引き上げてやると良いかと。
「Extravagants Dientes」はベスト盤『Telesterion』収録の「Casate Colmillo」オルタネート版。

『Ensayo De Un Desaparecido』(essay/trial of one disappeared)は、一聴した時点でもろ判りなぐらいに過去作『XENOPHANES』の再解釈。これを敢えていじるとしたらまあ確かにこういう感じにはなるだろうな、という程度の落とし所になっている。ギターは大部分スポイルされ、アンプに通したようなシンセのストリングス及びメロトロン、エレピに置き換えられているので幾分サイケポップ感が強調されて面白い。ディーントニ・パークスのドラムは、トーマス・プリジェンの異常な手数に比べたら大分落ち着いてはいる(それでもどうかとは思う多さではあるが)。オマー独特の湿ったピアノのソロに様変わりした「Nocturna Luz(Amanita Virosa)」、相変わらずエモい最後の「La Orilla(Maria Celeste)」迄の3曲が聴き応えあり。ちなみに本作も良いが、『XENOPHANES』は何故The Mars Voltaとして制作しなかったのかが不思議なぐらいの傑作なので、オマーのソロに興味は無いがThe Mars Voltaは好きだ、という向きの方には大いにお薦めしておきたい。

Ipecac Recordings
https://orlprojects.bandcamp.com/

 

「Promotivo y Barbaro」。後半は「Roulette Dares (the haunt of)」デモ音源の一部分。

「La Orilla」の元、「Maria Celeste」。

 

 

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