notable TM NETWORK and TK works

TM、TK、小室哲哉。最終的には私生活を暴露された末に引退を発表するというつまらない結果になってしまったが、アーティストとしてだけに留まらず、モーツァルト並の多作を誇る作曲職人、J-POPシーンを一新してしまった程のプロデューサーとして才覚を発揮したことは言う迄も無く、これらはしっかりと評価していかなければ如何無い。事実その三面で国内音楽シーンのトップを席巻してのけた訳で、前人未到の偉業ではあるのだ。
※2018.08.08追記:引退発表された後に書いた内容なのだが7割書いたところで放置していたので今更感は拭えない。
小室哲哉はシンセマエストロ的な捉え方をされているが、実は既製品のプリセットを平然と使う程度には音色そのものに対してあまり拘りが無い。テクノロジーへの並々ならぬ関心はそれをどう使い込むかでは無く、自分の理想通りの楽曲を書く為にどのように自分に対してシームレスに使われてくれるのか、が第一であり、シンセに関しても同様に音色がそのように出せれば良いというスタンスの方が強かった。80年代後半に於けるYAMAHA DX7のベース、90年代に於けるRoland JD-800のピアノなどがその代表的な例だ。TMのマニピュレーター/サウンドプログラマーを当時担当していた小泉洋、迫田到からも言及されているし、シンセ系の雑誌でもそこまで具体的に作り込み方に踏み込んだ本人発言は無い。尤も時代的にも、現場での音色作りと言えばマニピュレーターがシンセを持ち込んで一から作る時代であり、またデジタル優勢になって以降は機材単体で作るよりも複数音源でレイヤーさせる傾向が一般的だった、というのもまああるが。
惜しみなく使われた古今東西の数多のシンセは表現の為の道具であり、最適なサウンドプロダクションを施す為の手段だったと言える。ソフトシンセ全盛になった昨今でも当人は、最適な音色を選び抜くことは然程時間を掛ける程の問題では無く、寧ろその時点で迷うのであれば才能がブレている、とまで明言している。機材マニアと化すことなく、表現とサウンドを実現する為のアイデアと作曲技術、流行のジャンルを音源ごと取り込んで解釈するセンスと速度感に秀でていたことが、結果として彼をテクノロジーの申し子たらしめていたと言っていいだろう。

そういう訳で以下、TM NETWORKの時代から既に出来ていた多くの技巧の下地を踏まえつつ、自分の嗜好(どう考えてもこれが本旨だ)と交えてTM楽曲をつらつらと挙げていく。邦楽雑誌では無いので、アーティストに対して雑談みたいな仲良しインタビューをして成長がどうこうと曰う様式美に基づくことが出来ない分、楽曲そのものに触れて何が具体的に面白い/優れているのかを交えて書く。この手の記述は深掘りすると専門的になってしまうが、デジタルディバイドと同じく判りたい者だけが判れば良く、そうで無い者のQOLや品性が育たなくなるのが教養主義なのでまあいい。動画サイトにオリジナルの音源はほぼ無いので、音源を買うなりストリーミングサービスを使うなりして確認するように。

 

1974
デビュー前には既に作られていた曲。Sequential Circuits Prophet-600のリード、間奏でウェーブテーブルをずらしたPPG WAVE2.2らしい音色など、当時のシンセに於ける如何にもな音色を存分に楽しめる。またこの曲はハイハットもシンバルも一切入っていないのが特長で、アコギのピッキング、KORG Polysixでのシークエンス、恐らくPPGであろうベースのアタックを強調することでしっかり8ビートが刻まれるようにしている。後年「DRAGON THE FESTIVAL」カップリングとして収録されたCHILDREN'S LIVE MIX(当時のライヴ仕様をスタジオ録りしたver)でもほぼ同じく踏襲されている。

クリストファー
木根曲。マイナーで入ってサビがメジャー(「1974」はその逆)という調性変化は今でこそ当り前過ぎるのだけど、当時此処まで頻繁に多用していたアーティストはあまり居なかったかと思われる。上モノのフレーズをクラシカルな印象でまとめているのにベースがブギー、音色がバグルス風。終盤のコーラスの重ね合わせタイミングは8小節で無く6小節1ループとしてカウントしている為、バックトラックの4拍子とは緩いポリリズムになっている。

金曜日のライオン
カリブへ行き欧州へ行き、果ては宇宙へ行ったり時間を遡行したりととても忙しい1st『RAINBOW RAINBOW』の内、アフリカへ行きました編。中期以降スポイルされてしまった具体的な物語感や文学的な比喩表現を伴う小室歌詞が貴重。
フォルマントのようなブラス、荒い倍音のチェンバロ風音色、サビの後にメジャーへ替わる箇所でのトレモロっぽく鳴るエレピ風音色など、使ったシンセはPPG WAVE2.2が大部分と思われる。ベースの歯切れの良さや間奏でのソロも捨て難い。と言うか1stの山内薫ベースはどれも良いので改めて聴き直してみることをお勧め。
本作のリリースから約二〇年後に、主題と副題を入れ替えた「TAKE IT TO THE LUCKY」としてセルフカヴァーされ、その際は当時猫も杓子もの勢いで流行っていたトランスをベースに再構築されていた。多展開だがA/Bメロが同様のコード進行を持つ楽曲なのでもう少し巧くトランスに置き換えることは可能だし、また親和性が高そうなバレアリックハウスとして好意的に受け取るにしても踏み込みが浅い為、あくまで「トランスのようなもの」程度に留まっており、折衷感は良くても真に原曲と好対照な演出が出来ていたとは言い難かった。音色のクオリティは流石。何よりも酷かったのはシングルの藤井某のライナーノーツ。
更に一〇年後には「金曜日のライオン2014」としてEDM化。元々EDM自体がElectronicのDanceのMusicであれば何でもありという大雑把なジャンル定義なので、TMとの親和性はなかなか高く、例のブラスリフも効果的に使われていた。

ELECTRIC PROPHET
本来は『CHILDHOOD'S END』に収録される筈だったが外され、EP『TWINKLE NIGHT』に収録。その為、音の隙間の具合やラテンパーカッションの多用、シタール風のざらついた音色(PPG WAVE2.2っぽいが、EPではE-mu EmulatorII以外のシンセは使っていないとの発言もある。その割にはEmulatorIIではきつそうな音色もあり、諸々確証は無い)、SF観に基づいた歌詞が互いに共通している。キックとスネアのリバーブ並びに音数を抑えたことによる透明感が俯瞰と追想の空間を描いている。
フォークのようなヴォーカルのヒントは、ボブ・ディランよりかは当時同じEpic在籍だった佐野元春ではと邪推している。最も盛り上がる箇所で最もダウナーになるサビの歌詞の英語が全然意味判んないけど。

Come on Let's Dance (This is the FANKS DYNA-MIX)
初出である『GORILLA』版は短く、12インチシングル向けにカットされたこちらの方が本来の長さという謎の逆転収録をされている曲。ベースが隙間だらけなのにしっかりドライヴ感があるのは、リズムが重く、ベースとキックがほぼユニゾンしていることと、上モノがしっかり16刻みをしている為。それとAメロ、Bメロのエレピを加工したようなパッドでの単音カウンターが独特。初期~中期はよくこういう不思議なフレージングをしていたが、恐らく手弾きのクセそのままではないかと思われる。
『ORIGINAL SINGLE BACK TRACKS 1984-1999』では何故かイントロ1小節だけ補完した『GORILLA』版になっている。3:23のサビに入る1小節分を別の箇所から代用する必要はあるが、『ORIGINAL SINGLES 1984-1999』の方と合体させて「This is the FANKS DYNA-MIX」の形に自力復元させることは可能。

Your Song (D Mix)
Aメロが小室作でサビが木根作。ジャン・ジャック・ペリーの「Baroque Hoedown」みたいな雰囲気の曲を作りたい、と言いながらプログレ作ってしまったらしい。事ある毎に言ってるのだが、この曲はギターとテナーサックス以外の大部分をE-mu EmulatorIIでアクロバット一人打ち込みしている狂気の曲だ(シーケンサーは本体だと思うが、そうでなければYAMAHA QX1かPC98+レコンポーザ)。TMのライヴでは定番となったサンプリング連打、オケヒでコードを鳴らすという今ではとても出来ない大仰さ、イントロのドラムパターンではEmulatorIIでのスラップベースの強いアタックをサブキック代りにした上でキックを裏拍から入れる等、予想外な作り方が大量に含まれていて飽きない。最後のズルッとした感じで弾かれたギターリフがまた、27.5kHz/8bitという荒いサンプリング周波数の音質と合っていて絶妙。
『ORIGINAL SINGLE BACK TRACKS 1984-1999』では3:19以降のオケヒのパートが丸ごと抜けていて、比較してみると808スネアの入ってくる位置が違う。一方『ORIGINAL SINGLES 1984-1999』では、4:28~4:35および5:39以降の右chの1kHz以上が突然オフになる(2008年に出た『THE SINGLES 1』では正常)。リマスタリング時のミックス及び編集のミスで無ければ、歌入りと歌無しとで起こしたマスターのverが別々、且つ歌入りの方のマスターは劣化しているということになる。バックトラックの方から補完することで自力復元させることは可能。

PASSENGER
同じくEmulatorIIを使い倒し始めた頃の傑作。Massive Attackの前身であるThe Wild BunchのDJ Mil'o、Willy Wee、ネリー・フーパー、3D(または恐らくバンクシーの正体)等がラップの素材元。最初から最後までずっと入り込み続ける手弾きオブリ(恐らくOberheim OB-8)や間奏の引っ張り方、またラップを基本的にサンプリング素材兼音色として全体的に散りばめ、無加工の本体を冒頭と終盤に違和感無く持ってきている構成が大変面白い。この曲はもっと評価されていい。
この曲の発想は後の『EXPO』の「Just Like Paradise」で再解釈されることになる。

雨に誓って-SAINT RAIN-
Oberheim OB-8(恐らく)の派手なソウリードでコードをバシバシ弾きまくるスタイルをスタジオ版でやっていることが珍しい、という曲。本来はライヴで賑やかしでやっていることの方が圧倒的に多い。この曲のサビ直前のスィープ、ベンドで半音下げてシームレスにサビにつながる絶妙さが心地良い。サビはC→D→Em7のベース上行形で、余り指摘されないがこの吃驚するような簡単なコードでの上行も小室手癖の一つに挙げていいと思っている。

Bang The Gong
アルバム及びライヴのイントロとして取って付けた程度の小品、にも拘わらず実はEBM。アーリーリフレクション、ピッチを下げまくったスネアのボディ感。

Self Control
難産だったと言うだけあって元のデモ版だと全然違う。シンセがリフとコードとシークエンスの3つを兼ねるシンプルな構造化をしていながらしっかり表情があるのは、ひとえにメロディでしっかり編みきるセンスに集約される。イントロのコードの音色は年代からしてRoland D-50あたりのLA音源だと思い込んでたのだが、実際にはProphet-T8だったらしくて素で吃驚した。EQで1kHzあたりを丸めたらしい。

All-Right All-Night
今でこそBPMの速いブラスロック程度の捉えられ方だろうけど、当時の感覚ではかなり常軌を逸した印象があったらしい。このぐらいの16ビートであれば、例えば1980年に出たスペクトラムの例の「SUNRISE」(歌入りの方)も余り変わらないのだが、決定的に違うのはヴォーカルの譜割で、これでもかというぐらい16分音符単位で言葉を乗せている点。構成に関しても、間奏(Am)→複雑なブレイク→イントロ(C)→サビ1回(A)→ブレイク→駄目押しのサビ繰り返し(B♭)、が普通に考えて頭おかしい。ついでに言うとタイトルも頭おかしい。意味不明という点で。「Body Feels Exit」ぐらい判らない。

Fool On The Planet
木根曲。ストレートなロッカバラード。ソウリードのグリッサンドやシタール風の音色を入れる捻り方もさることながら、珍しく全て小室担当のコーラスがどうにもシンセっぽく、普段のコーラスのように主張してこないところがまた面白い。

Get Wild
言わずもがな。今や国内ポップ三大コードの一つとなった小室進行(VI(m)→IV→V→I。スケールがCmajならAm→F→G→Cの進行)の代表。そんなに音数は多くなく(元々この当時のTMはシンセ多用している割には人力の比率が高いのでそこまで音数は多くない)、普通こんなフレージングにはしない独特な手弾き入力のYAMAHA DX/TXベース、二種類のパッドを使い分けたコード、エグめにフランジャーをかけたリードなど要所要所で存在感の強い音色を配置して、左右に飛ばしたシークエンスでちょっと壁を作って、後はギターで賄ってたりする程度。殆どB、C#、D#の3音(一箇所だけE挿入)で出来ているサビのメロと、スネア全抜きの構築力。

Children of the New Century
ほぼ同時期に作られた「BEYOND THE TIME」と同じく、普通そんな譜割にしねえよという、シークエンスパターンを兼ねたDX/TXエレピ的音色のコード連打。曲のシリアスさを頑強に支える、弦をしばきまくって縦横無尽に音域を往来するベース(カシオペアの桜井哲夫)が秀逸。技術的観点を抜きにしても単純に格好良い。エブリバーディ、の発音は一寸格好つかないが。

Kiss You
「なんでヒューマンシステム」のインカムが入っているスペイシーなシングル版の方。あの当時にこれをシングルカットしたセンスが好きだ。小室本人はリフの明確なロックだという旨を発言しているが、ファンクなのではという気がする。リフ主体でコードの変化がシンプルである故にどうやってもつながる利点を生かし、1回目のサビの後にBメロへ戻って一区切りする捻り方が効いている。この曲調であればそれこそ弦をしばき倒すファンキーなベースを入れるであろうところを、DX/TXベースにしてしまったのも注意すべきポイント。ジャンルとして本質的に正統なのは「KISS YOU(KISS JAPAN)」の方だとは言える。

Resistance
『Self Control』でのアウトテイク再利用。「Get Wild」同様の不思議な手弾きFM音源ベース、ギターリフはKORG M1の波形に似ている…がM1発売前年なのでサンプリング&打ち込み。デモ当初は「This Night」のようなミドルテンポのバラードを想定していただけあって元々の楽曲の良さが際立っているが、Bメロだけメジャーに転換してサビでマイナーに戻った際の力強さを演出する、別にやらなくてもいいのにわざわざサビでA→Cへ転調する、最後のサビの直前でドラムソロのフィルインを挟む、一番最後にギターソロとコーラスで駄目押しをしてくるといった過度の盛り上げがこの上無く格好良い。そう言えばシングルのジャケが、斜めパース&黒赤という構成主義感満載でこれまた格好良かった。語彙力が低下する。

Come Back to Asia
作風としても大分珍しいタイプの木根曲だがアレンジについて挙げる。なんとなく中央アジアっぽいという程度のエスニシズムをポップスに混ぜ込んだ際のバランス感覚の良さ、そしてコードをフレンチホルンにし、スネアをロール主体にすることで絵面的(或いは喜多郎的、久石譲的、80年代の坂本龍一的と言い換えても良い)な行程感の想像と郷愁を引き立たせているのがこの曲の全てだろう。メロに対するシタールと似非サントゥールに依るカウンターが絶妙。

BEYOND THE TIME
クリーンギターを追加してストリングスを殆ど絞ったExpanded Versionが『Carol』に収録されているのでこの時期の曲だと見せかけつつ、実際には『humansystem』直後の曲。この曲に関しては事ある毎に言っているのだが、実はやっていることがかなり異常だ。普通そんな譜割にしねえよ、というシークエンスパターンを兼ねたFMエレピのコード連打や、明らかにリアルタイム入力でクオンタイズがトチッた箇所を放置しただろというベース(大方Minimoog)を修正もせずに本採用しているとか、対してストリングスを模したシンセが単音にも拘わらず物凄く絶妙にベースとコードとメロの間を縫いきった見事なカウンターになっているなど。
極め付けは構成で、初期の「永遠のパスポート」同様、BメロがイントロをAm→F#に転調しただけの同じコード進行であり再利用している。Bメロがイントロと同様なら其処が最も盛り上がる箇所なのかと言えば、下げて転調している為に前振りの展開をしており、その後に別途サビが存在する。一方で終盤はAメロに戻り、イントロで使用したフレーズを再利用しつつ、テナーサックスとギターのソロを交えて再度盛り上げてから締める。普通にA-B-サビ形式の歌モノを作るならイントロとサビを同じにするもので、こんな構成にはしない。なのに、自然で全く違和感が無い。
TM楽曲として評価が高いのは勿論『逆襲のシャア』テーマ曲ということでガンオタにもスパロボから入った層にも人気があり、ベスト盤にはほぼ必ず収録される。だがオリジナルを7インチ版としている節がある為、8cmCD版と同一の音源が収録された例が殆ど無い(確認出来る限りでは『TIME CAPSULE』のみ)。Instrumental Mixに至っては8cmCD版のみ。

GET WILD '89
何はともあれ田植えダンス。当時PWLが代表格だったユーロビートの影響が強かった余りPWLそのものにリミックスを依頼したら、そのまんま過ぎて大当たりした曲。余り気付かれないポイントとしては、要所要所で元のDX/TXベースと新規で足されたベースの両方をぶつからないように使っているところ。
『ORIGINAL SINGLE BACK TRACKS 1984-1999』では何故か大幅な短縮編集がされている。『ORIGINAL SINGLES 1984-1999』をベースにすれば自力復元は可能。

DIVE INTO YOUR BODY
これも半分PWL。イントロのブラスが全て。この当時のユーロビート系の曲ではかなりの頻度で使ってたOberheim Matrix-12。単音故に大体どんな箇所でも馴染ませられるということで、イントロではマイナーっぽい印象で聞こえるのに完全にメジャーなサビではちゃんとメジャーに聞こえるというリフ。
一方、『GROOVE GEAR』に収録されているTMN WILD HEAVENツアー(1991.12.01)版では『EXPO』のアプローチが入った為、このリフは冒頭の合図程度にしか使われていない。その分と言ってはあれだがブレイクビーツ色が強く、ベースも丸ごと差し替えられてグルーヴ感が増しているので一聴の価値あり。

THE POINT OF LOVERS' NIGHT
タイトルは一見意味不明だが、ハワイの恋人岬(Two Lovers Point)が元ネタらしい。「Get Wild」とアプローチが似ているシングル版より、山木秀夫の生ドラムに差し換えられているアルバム収録版の方がグルーヴが出ている。ドラムの絶妙なハネ具合が良いのだ。殆ど山木ドラムだけで『RHYTHM RED』が救われている、と言ってしまうのは過言だが、まあそれぐらい良い。そしてレイヴサイレンを交えたようなMemorymoogの単音リードに、ライヴで専らシンセをギター代りのリード楽器として弾いていた小室独特のクセが存分に出ていて、よりTMらしい。サビ最後にスケールがブリッジ無しでFm→G#mに変わる強引さによりメロが微妙に解決してない気持ち悪さが未だに拭えないんだけど皆さんどうでしょう。

RHYTHM RED BEAT BLACK
ブッスリ刺さって抜けないハイヒール。タイトルに抜粋し、ハードロックを謳い、しかしコーラスにかける過剰なリバーブやギターの音作りの悪さに加え、サビで底抜けメジャーに転調する小室癖が軒並ダサい方向にしか滑らなかった(きちんとマルチトラックからリマスターされた音源なら少しは違う印象になるのかと思って興味無いのにわざわざ2014年版を買って聴き比べ迄してうんざりして自前リマスタリングを加えた私の気持も少しは伝われ)『RHYTHM RED』に於て、曲調からサウンドプロダクションまで不自然に異なっている理由は、そもそもハードロックで固めようとする以前からクラブ的アプローチのものとして仕上がっていたのが理由らしい。その方針は正しかった筈だが、何故そこで自分で弾けない楽器がメインのジャンルを場当たり的に選んでしまったのか。ともあれオリジナル、9分を超えるVERSION 2.0共に、それまでの従来形のTMから、その後の『EXPO』及びTKサウンドを確立するまでの中間形態として捉えるべき重要な一曲。尚version2.0の完全版は、8cmCDシングルの他は『TMN RED』『THE SINGLES 2』にしか収録されていない。

Love Train
頗るTR-727。イントロのスィープは小田和正の「ラブストーリーは突然に」みたいなキャッチーな掴みがほしかったので入れたとの話があったが何処がやねん。カラオケで歌いやすいことを意識した故に実際カラオケで人気が出た訳だが、最後のサビでの転調は実はA/Bメロと一緒、つまり本来のサビは下げている、という、人に優しい転調技があったことを忘れてはならない。
この曲もトランス風のセルフカヴァーをしていた。クラブでかけた際に抜くべきトラックやタイミングは其処じゃねえだろ的違和感が山盛りなのは扠措き、プログレッシヴトランス然としていて「TAKE IT TO THE LUCKY」よりは巧く再解釈されていたと感じる。元が727使いまくりなのでやはりバレアリックが落とし所じゃないかなとは思ったけど。

Just Like Paradise
Cmaj7→D→Em(イントロはG→D→Em)のベース上行形、コードのボイシング、それらに絡めてペンタトニックで抑えたメロとリードのフレージングと、上行形小室節の集約だと個人的には評している。サンプリング切り貼りのようなどうでもいい歌詞の連ね方は「Passenger」の再解釈とも捉えられる。1拍目にリリースの長い808キックを重ねて全てのアクセントを集中させた手法は、実はこの8年後にビッグビートの主軸として世に広まることになる。尤も確実に偶然なのは判りきったことではあるが、かなり早い段階で呈示されたこの発想を評価している。

Pale Shelter
木根作、小室編曲。ロジャー・ディーンによるタイトルロゴデザインから丸判りである通り、イエスの「Close To The Edge」とか『Tales From Topographic Oceans』が元ネタになっていた『Major Turn-Round』で、最もプログレらしかった曲。特に捻りも無く、マイナー進行でサビだけメジャーに変わる程度の6/8拍子の曲だが最もプログレの印象に近かった。有り体に言ってギターで作った曲だからだろう。
肝心の表題曲はと言えば、細切れのフレーズ詰め合わせ+アドリブ一発録りを軸に編集・構成されている壮大且つ長大な「断片の組曲」である為、アクロバティック且つ渾然一体とした一曲になることはおろか(往年のイエスやELPは極めてクラシカルにガチガチに固めて制作していた)新機軸な点も無く、80年代TMが平然と有していたようなプログレ感すらも希薄という皮肉な作品であった。TMらしい折衷感があったのは「IGNITION, SEQUENCE, START」。

RAINBOW RAINBOW 2014
『DRESS2』で割と率直に感銘を受けたのがこれ。元々イントロ~Aメロが大体ワンコードなのでEDMとして再構築されても何の違和感も無かったのであった。テクニカルな生演奏ベースが無い代りにミュート気味のギターリフが邪魔にならない程度に原曲のファンクさを醸していて、EDMで本来これはないだろうという所ではあるが寧ろ逆にゴアトランスに於けるギターの如くとてもハマリ所になっていた。サビのメロは節々で敢えてFM音源的なベル系音色で鳴らしていたりもするのが良いアクセント。
ところで、小室の声が変に濁ってしまい、コーラスに澱みが目立つようになってしまったのはもうお歳だし仕方無いよねと思うんだけど、宇都宮隆の声質は齢を重ねる毎に高く細く安定していくという通常のヴォーカリストとは真逆の若返り傾向を辿っていて、何故そんな芸当が可能なのか不思議で仕方無い。強いて老いたと言えば若い頃のアタック感が失われた程度。派手に補正している訳でも無く、ライヴでも大体このままの声質なのでますます謎。

I am
小室曲らしくない余りにもベタなマイナー進行が随所にありつつも、半分は往年のTMらしかった(但し残り半分は駄作)『QUIT30』の中で、特に新旧織り交ぜたバランスの良さでこの曲を挙げたい。各セクションは明確ではあるものの展開に捻りが利いていて、イントロ→サビ(コーラス)→サビ(メロ)→Bメロ→Aメロ→サビ…という、通常であればAメロ→Bメロ→サビとなる筈の逆の展開になっている。Aメロ以外は上行進行(D→E→F#m→Aのキースケール違い)、メロが「Jean Was Lonely」に似てるBメロと、敢えてサビで転調して一層上げる方法論などがTM懐メロ感を表現し、一方でサビに於ける今の小室手癖、音数の多さや音色の今時感が2014年時点での現在形を表現していた。2012年発売のシングル版の方が往年のTMらしさはあるが、懐古がやや露骨な割にはDX7ベースに全く気合を感じないし、使ったから何だという程度なので、アルバム版の完成度に軍配を上げる。
で、表題曲である「QUIT30」はどうなのと言われたら、即興メドレーたる「Major Turn-Round」の再生産なので相変わらずプログレ感は希薄で、コード進行やフレージングが一々ダサく(但しこのダサさに関しては、4年以上経過した現在のJ-POPが80年代歌謡曲的なベタさを積極的に採用している面では先取りしていたと言える)、特に長大化させる必要は無かったという感想。プロデューサーとなって以降語彙力を捨てて平易な喋り言葉でしか書けなくなった故の、IQの低い説教じみた歌詞もまたひたすら痒かった。いい歳なんだからもうちょっとさあ、とつくづく思った。序でにジャケも信じ難い程低予算でださい。

 

番外編   

Opera Night
Ensoniq VFXばっかり使ってたソロ作から。無理無くTKヴォーカルを聴ける数少ないソロ向けの曲と思いきや、元々はTM NETWORKメジャーデビュー前から存在していたボツ曲。「Open Your Heart」の発音が「Opera Night」に似てるなと思った程度でここまで発展させたのではなかろうか。
元々当時のソロがTM NETWORKでのデモをそのまま完成させてみるという前提ありきだったので、その過程でスポイルされたものを再利用する(その点では「Christmas Chorus」「Running To Horizon」も同様)のは自然と言えば自然だが、普通一度ある程度の形まで作ってしまうとそれに囚われやすくなる、または没にした古い曲はダサいと思い込んでしまう、という作曲者側自らが陥りやすい罠を簡単に大改造してクリアしてしまう拘りの無さはプロデューサーならではの客観的な視点であろう。

Relaxation -自己回帰-
デビュー前は聖飢魔IIのローディーをやっていたと専ら噂だったMr.マリックとのコラボ作品、ということで色物過ぎて殆ど黒歴史化している『Psychic Entertainment Sound』の1曲目。10分弱。音色だけを聴くと、自宅でKORG M1やYAMAHA SY系を中心に組み上げた素材をシンクラヴィアで編集したと思しき低予算感は流石に否めず、下手をするとシンセメーカーがアーティストに依頼した機材デモ音源のような印象すら受けかねない。しかしキーボーディストに依るデジタルシンセ主体のプログレとしては大分攻めた作りになっており、『Soil Festivities』~『Direct』の頃のヴァンゲリスや『Underwater Sunlight』~『Optical Race』辺りのタンジェリン・ドリームの小室版といった趣がある。ちなみにユリ・ゲラーの『Mood』のようなマリックの面白語りは6曲目にしか含まれないので、他は安心して聴ける。当り前だがArt Of Noiseの「Legs」も入っていない。

宇宙
川中島の合戦を背景とした角川映画『天と地と』(1990年)のサントラ仕事。楽曲中盤からの盛り上がりは主にボレロ風のリズムに依るが、それ以上にカウンターメロディの牽引が物凄い。そして、高いサンプリングレート(今で言うハイレゾの96kHzが余裕でいけた)に出来る上音源付HDRとして使えるシンクラヴィアで何処迄フルオケを再現出来るか、というシンセフルオケの限界に挑戦した手法が本作の大変面白い所。
残っている記述や記録から解釈する限りでは、大宮ソニックホールの舞台上で、PCMシンセまたはシンクラヴィアでサンプリングしたオケ音色を1パート≒演奏者一人分ずつ弾き、更に音響と空気感を得る為にそれを別のシンクラヴィアでHDR録音編集していたと思われる。確かに元々PCMで扱いやすいストリングスの音色に関しては、アーティキュレーション含めてリアリティのある出来になっている。しかしあくまで只のサンプリングに過ぎない為、楽器毎の構造的な音響のクセ、演奏者に依る発音や音程のばらつきを一音(+アンサンブル)毎に表現することは非常に難しい。従ってデュレーションがスタッカートぐらい短い音の連続になると途端に表情が失せる。金管系やマレットやハープや打楽器は特に、とてもサンプリングの質感だとしか言えないのっぺりとした音色が丸分かりである。
フルオケの音色が揃っていても矢張りシンセはシンセに過ぎない、という当時の限界を本作は示してしまった。三桁に及ぶトラック、ホールの音響を使う程の潤沢な予算と時間があってもこれが限度だったのだ。GB単位の大容量サンプリングとフィジカルシミュレーションで驚異的な再現力を誇るNative Instruments SymphonyやEASTWEST Quantum LeapsのようなVSTを使えば幾らでも生演奏の代替が個人で可能な現在とはまるで違う。せめてフィジカルモデリングの音源でもあれば多少はオーケストレーションに表情が増えたのかもしれないが、生憎、史上初のフィジカルモデリングを実現したシンセ(YAMAHA VL1)が市販されるのは三年後の1993年である。
だがしかし、今だからこそこれで良かったし、紛う方無きこれこそが良いのだ。Moog IIIcでフルオケの表現を試みた富田勲のように、New England Digital Synclavier9600を使い倒したこのPCMの極致と限界が技術面に於ける時代性の貴重な記録であり、またテクノロジーに依存する小室哲哉のアイデンティティの体現でもあったからだ。発想としてはやれるが本当にやる者など居なかったのを、角川肝いり故の予算に乗じてTKは敢えてやった訳だ。その点でもこの作品は本来評価されるべきであろう。
ちなみに、1996年にOracleの企画で行われたtk-trapというライヴで、サントラの主題を使った「HEAVEN AND EARTH」を英語ヴォーカルでアレンジしている。ポップをフュージョンで解釈した感じなので、何と言うか全体的には坂本龍一の1985年ライヴ盤『Media Bahn Live』まんまなのだが、TKにペンタトニックを扱わせると東洋風だろうが西洋風だろうが見事に素晴らしくエモいメロディーラインを練り出すことが非常によく判る。

愛撫
YAMAHA SY85を多用していた時代。数々の提供楽曲の中でも群を抜いていると思える曲。Aメロで明菜の低域を活かし、Bメロで一番美しく伸びる声域をしっかり押さえつつ、Cメロで音程の上下を際立たせてヴォーカリストの対応力(強弱がややアレなのは「lonely」の単語が元々発音的に弱いので仕方無い)を示そうとしている見事さ。そうであるにも関わらず、イントロ(=サビ)、Aメロ、BメロのスケールはG#m→Fm→Gmに移調しているだけで進行が一緒。如何に小室のメロディメーカーとしての資質が際立っているかが端的に判る楽曲だ。だがそれだけにサビが余りにシンプル過ぎてとても惜しい。惜しい余りTVでは小室本人がその声質を活かしたハモリで厚みをカヴァーする為だけにわざわざ出演している感すらある。

恋しさと切なさと心強さと
恋しさと切なさと糸井重里。Roland JD-800大好き時代。J-POPに於ける終盤の転調と言えば小室自身が連綿と醸成させてきたダメ押しの盛り上がりの演出、の筈なのだけども、スケールをEm→Fmに上げた際にそこのヴォーカルを抜いてエンディングに仕立てているのが今聴くと新鮮だなと思う。発声域が足りなかった節は否定しないが。改めて聴くと篠原涼子の声は高いのに無理が無くて耳に優しい。音域の上下に着目してると実はメロディよりコーラスの方が難しいんじゃないかと思った。

Silver And Gold Dance
Ensoniq ASR-10大好き時代。レイヴと言いつつ殆どイタロハウスでちっともレイヴじゃなかったtrfの中でも数少ないレイヴっぽい曲。スケールはC#m(但し何故か一番最初の1音だけキーがE♭で例外)で、サビ-A-Bメロ全てのヴォーカルパートの音程がE、G♭、G、A♭、A、B、D♭に収まっていて、実は音域が1オクターブ未満。優しい。

FREEDOM
KORG TRINITY大好き時代。初期globeでは最も酒井パンサーが表に出ることが出来た曲、というのはまあどうでもよくて、オープンハイハットが4つ裏打ちなので4つ打ちのように聴こえるがキックは典型的な8ビートになっている、何故そうしたのかよく判らない、しかし特に違和感が無い不思議な曲。間奏のバロック弾き、ソウリードでばしばしコード(F#m→G→Em7→(Em9)→A)を叩き込む辺りにとてもTM時代を感じた。サンプリング散りばめのラップは酒井パンサーの独壇場に代わったが、個人的には「Passenger」「Just Like Paradise」の流れを汲んでいるものと捉えている。
※wikipediaを見たらバックトラックのピッチ修正に3日かけたとあったが、タイトルコールの裏声はまだ上方に修正する余地があり、メインヴォーカルの幾つかの修正すべき箇所は手付かずで残されている謎。

 

 

TK LIVE SYSTEM
最初の解散までのライヴ機材一覧。素晴らしくマニアックなまとめ。

小室哲哉シンセサイザー図鑑
こちらも同じくナイスまとめ。時間をかけて拡充していってほしい。

TM NETWORK RESTORATION OF ORIGINAL ALBUM
2007年紙ジャケリマスター時の解説。この際のリマスターは過剰な海苔波形だった。2013年リマスターではある程度抑えられてバランス良くなっている。

 

 

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