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TRANSFORMERS: 全作品感想まとめ

余り映像に時間を割くことに興味が湧かない質だが、トランスフォーマーは映画館へ行って毎回ちゃんと観ている。しかしこれまでの5作品に関して個別の細やかな感想が浮かぶかと言えばそうでもなく、大体毎回同じ感想に落ち着く。詰まる所根幹がぶれないという証左でもある。素晴らしい話ではないか。

 

殴り合い宇宙
オートボットもディセプティコンもあれだけ利便性が高く、且つ多岐に亙る応用が利く存在であるにも関わらず「そこに戦略は無い」。ワンマン社長の豪腕vs野心を燃やすその他大勢で構成される強力トップダウンなヒエラルキーは、家族経営の中小・零細企業に於けるそれである。肉弾戦にさえ発展すれば、豪腕それ一つで通せてしまうが故、戦略など全く必要無いのだ。
また、人間は幼い云々とオプティマスプライムは独白するが、トランスフォーマーは全員殴り合いで全て解決の蛮族だ。どのような無機物にもトランスフォーム可能であるにも拘わらず、自在に飛び道具を発射出来るにも拘わらず、何か起これば最終的には殴り合いで解決だ。場合によっては引き千切りもする。仲間内ですら鬱陶しさを感じたら殴りかかるし、相手が小型のトランスフォーマーであれば彼方へ吹っ飛ばされる。若し伊藤計劃が存命していたとしたらいたく歓ぶであろう蛮族振りだ。
だが人類も人類で、トランスフォーマーをオートボットとディセプティコンの二大勢力が把握出来ておらず、十把一絡げにして人類の敵扱いするぐらいには知能が行き届いていない設定になっている。

宇宙最強の脳筋、オプティマスプライム
オートボットが誇る最強の脳筋・オプティマスプライム。先に意気揚々と出撃したのに最後に到着する、ロープに引っ掛かる等、肝心な時に道草食いまくって出てこない。彼の豪腕が最も必要になる場所と局面は常に今スクリーンに映っている其処なのだが、脳筋なので戦術とか効率といった類の概念は持っていない。そんな彼は、トランスフォーマーの叡智が刻まれたリーダーのマトリクスを格納している。
その分、超絶気合を入れてディセプティコンに挑み掛かった時は必ずソードマスターヤマトの四天王串刺し展開になる。大暴れしてスッキリした最後には必ず賢者モード語りで締める。チートキャラなので、オプティマスを何処に登場させるかで自由にシナリオを進められてしまえるぐらい脚本家に優しい脳筋でもある。
しかし彼は一旦心を開くと徹底的に優しい。NSAやTRFの所為で何体もの同胞が葬られたにも関わらず、自分によくしてくれた勇気ある者の為に戦い、守る。他のオートボット(苦労をするのは主にバンブルビー)に守れと命令して自分はどっかへ行くぐらい手厚い。説得もちょろい。若し近所で彼を見掛けたら、最強のボディガード兼移動手段を得るべく、何を差し置いてでも手助けするべきだ。

事実上最強のトランスフォーマー、メガトロン
ディセプティコン、と言うかメガトロンはオプティマスに勝ちたいだけが目的のあれなので地球の支配とか実はどうでもいい。人類を奴隷にすると言ったりエネルゴンの為に地球を壊すと言ったり故郷を戻すと言ったり、目上のトランスフォーマーの影響をすぐ受けるので毎回やりたいことが違う。
胸部のマトリクスを破壊されると死ぬオプティマスに対して、ぶっ飛ばしても貫いても頭を割ろうとも決して死なない不屈の生命力を誇るメガトロンが全トランスフォーマー中最強。こちらもそういう点ではチートキャラなので、配置次第で強引にシナリオを進められてしまえる以下略。と言うか、メガトロンさえ使えば無限に新作の脚本が制作出来る。
死なない且つ博識を以て毎度先手を打つ策士家にも拘わらず、何故勝てないか。それはひとえに自身の博識を正しく使えない程度には頭が悪いからだ。あらゆる面で隙がでか過ぎる。言うなれば、Bボタンで全壊ボムが出せることを知らずに弾幕ゲームの最難関で死に続けてはコントローラーを床に叩き付けるようなタイプだ。脳筋を呼び寄せる前にカタをつければ済むのに道草を食った挙げ句結局殴り合って敗ける、オプティマスとはまた違ったスピード感の無さにも起因している。誘い受けか。

一方、人類最強はレノックス
全シリーズ通して最凶の前線に出動して且つ生還するレノックスが人類最強。非常に高いトランスフォーマー殺傷率もさることながら、驚異のRTB能力。ロッチナもウォッチ対象に加えかねない異能生存体。しかしそのずば抜けた能力と功績が最も階級に反映されない薄倖ぶり。もう少し待遇を何とかして差し上げろ。

 

ところで、目下の最新作である『TRANSFORMERS: THE LAST KNIGHT』に関しては新しい所感が出てきた。これは非常に目出度いことだ。より面白味が増すからだ。購入しておいたままずっと放置していたDVDを観たこの機会をいいことに、以下それを挙げていく。

 

安定のオプティマスプライム
今回もソードマスターヤマトのような四天王串刺しは健在だ。そして、わざわざ前回の最後で意気揚々とセイバートロン星へ戻った(ポッド型やシャトル型にならずいつもの姿のまま地面に叩き付けられる、脳筋振りが最大級に活用された雑なエントリーを見事果す)のに、脳筋なのでクインテッサの語りとビンタ一発で簡単に洗脳される。そしてバンブルビーのマジ声で洗脳から眼を覚ます、という腐った薄い本の需要喚起。新要素。

伝説のキーアイテム二種類の新機軸
瀕死のトランスフォーマーから継承した伝説のアイテムが剣に変化し、下手すると百倍近い体躯のトランスフォーマーの剣を、人間がその人間サイズの剣で真っ向から受けて仲間のピンチを救う。具体的な効果を発揮したその一度きり、その後登場しない、という驚異の使い捨てキーアイテム、タリスマン。純潔が適応者条件の一つになっているが、数年御無沙汰のおっさんでも条件をクリア出来る懐の広さ。
使用資格を遺伝子レベルで受け継ぐ若い女性教授が導かれるままに発見したが、洗脳されたオプティマスに奪われ、更に突然飛んできたメガトロンに横奪りされる、という、公園の鳩の群れが一片のパン屑を投げられた際の争奪戦ぐらい脳がブドウ糖を浪費する必要の無い展開が発生する。その後首魁クインテッサが普通に使っている。バイオメトリクスの設定をもその場で使い捨てた見事なキーアイテム、マーリンの杖。
杖については、起動してしまえば後はどうでもいいタイプであるのかもしれない、と好意的に捉えるとしよう。だがそうだとしたら、重要度に対するセキュリティの観点からはとんでもない脆弱性を残したまま実装された代物なので、断じて正式運用するべきではない。実際やらかしてしまった結果がこれだ。更に好意的に、この杖はIoTに於ける実稼働期間とセキュリティパッチ供給の諸問題ならびに運用マニュアルの不在に関する警鐘であると汲んで差し上げたい気持もやまやまではあるが、過剰な優しさは翻って罪であろう。

サー・エドモンド・バートン(アンソニー・ホプキンス)
代々伝わるトランスフォーマー絡みの最後の歴史継承者として本作のストーリーをいいように導き、単身ストーンヘンジへ赴き、仕込み杖で米兵のライフルより強力な一撃をメガトロンに喰らわせた状況下、何故かぼんやりしていて爆発に巻き込まれて絶命、という驚異の使い捨てキーパーソン。仮に死ななかったとしても、そこまで重大な歴史の継承者であるにも拘わらず世継ぎを作らなかった自己否定振りの為、何れにしても使い捨て。猟奇さが足りなかった所為か。恐らく彼は気付いていたのであろう、自分の立場自体はヘッドマスター=コグマンだけ居ればどうにでもなると。

ピラミッド
二作目に続いて破壊されるギザのピラミッド。第二の三部作という観点では本作も二作目に位置するので、微妙に関連付けたかったのだろう。短期間であの遺構の完全修復を可能とする超高等な土木技術があることが判る。

レノックスまさかの撤退
撤退の指示とタイミングに問題は無いのだが、レノックス自身も撤退してしまった。事実上初の前線離脱。解決した頃には戻ってくるが。あの状況下でパラシュート降下した兵を回収して即刻前線の地を踏ませられる米軍の驚異的な回収&再突入技能に関してはともあれ、再びレノックスは輝かしい生還記録をまた一つ打ち立てたのだ。家で待ち続ける嫁と子供は毎度生きた心地がしないことだろう。

セイバートロン星と次回作
二作目と違って自分から飛んできたから元の座標へは戻っていかない。その存在に因り日照や重力場が変わる為、従って地球環境は壊滅的に変わってしまうことになる。無論、衝突自体も地球環境が様変わりするレベルの大惨事である。その上、分離しているであろうユニクロン(地中に埋まっていたあれだけの規模の金属を、人類はエネルゴン検出技術を開発しても尚誰も把握していなかった)が世界各所で爪を出してスタンバイしている状況。まだまだ地球にはびっくりどっきりが埋まりまくっている、とのオチまで周到に付けている。これで回収をする気があるのかどうかが次回作の見物。まともに続きを想定するなら、爪が元のパンゲアでの位置に戻るように陸地を這い回って集い、セイバートロン星を投げ飛ばすか破壊するかして巨大な衝撃波を生み出し、結果地球が半分抉られて土星のようなアステロイドベルトが形成される(人類は死ぬ)ぐらいのシナリオにしないと丸く回収出来ないかと思われる。粗方現地からそのまま射出されて押し戻す、つまりパンゲアの設定を本作で使い捨てにする雑で安易な解決をするのではないかと思っている。そもそも『TRANSFORMERS: THE LAST KNIGHT』が本国でこけて予算回収出来てないから次回作すら危ぶまれる訳だが。

 

各アニメシリーズのシナリオから殊更派手なものを悪魔合体させてしまった点、豪快に広げ過ぎた風呂敷の随所に穴が空いていた為に内容物を包みきれなかった点、軍隊の戦略よりも素人の蛮勇が勝る点など、根幹に関わる突っ込み所も含めて色々際限の無い感はあり、設定面に於ける全体的な楽観がまるで伝説級の邦画『幻の湖』であるかのような錯覚を覚えるトランスフォーマー。しかし、これに関してはあくまで主役がトランスフォーマーであるべきなので、最早シナリオの整合性や人間ドラマ云々はどうでもいいのだ。あの素晴らしく複雑なトランスフォームがこれでもかと言う程鑑賞可能で、360度回転マイケル・ベイ撮りが諄い程繰り返され、蛮族同士が可能な限り長時間殴り合い続けることこそ至上でいいのだ。いっそのこと次回作は人類など二の次で、ただトランスフォーマー同士が二時間ひたすら殴り合い引き千切り合うだけの内容でも構わないのだ。

 

 

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