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Live 2017: Dutchman’s Pipe Cactus Official Bootleg / minus(-)

そう言えば買ってチラ見をして音源を抜き出して以降ずっと放置していたな、と気付き、なんとなくやることも思い付かないタイミングだったので観直した。

2017年大阪美園ユニバース公演、既に森岡賢が不在となり藤井麻輝ソロとなって久しい状況での映像となる。『V』Disc2では主要なヴォーカルパートは森岡賢のそれを流し、トリプルドラムの背後に鎮座する形で、相変わらずつまらなそうにMacBookと鍵盤の前に突っ立っているスタイルだったが、あろうことか今回は藤井麻輝全編ヴォーカルだった。
しかしライヴの光景に関しては至って何時もの藤井麻輝であり、観客を煽ったりもせず、矢張り相変わらずつまらなそうな感じで進んでいくあれであった。勿論楽曲の大部分はオケであり、ソフトバレエ時代のようなライヴ仕様の派手目な仕込みも無いので、殆ど完成された物が完成されている通りに流される按配だ。肝心のヴォーカルにしても、これ迄の「The Victim」や「B612」と同様、ヴォコーダーとエフェクトで完全に地声を埋没させるヴォーカルであり、剰え声量と抑揚が必要な箇所で全く動じず淡々としている辺り、それ自体も既にオケに仕込み済だと容易に判断出来る(「No pretending」は元の森岡賢のヴォーカルをベースにしている)。そこまで仕込んだ上でつまらなそうにしているという。藤井麻輝は昔からそういうポジションだという理解はあるので森岡賢の魂に憑依されるべきとは思わないが、それにしたっていっつも怠そうなあのKMFDMだってもう一寸活気があるぞ。

では見処は一体何処にあるのか、と言えば、然して広くはないが豪奢な美園ユニバース内で殊更燦然と輝く大量の照明と縦長ディスプレイであり、二人の女性ドラマーだ。ドラムだけはライヴとして確かに活きている。両サイドぴったり息は合っているし、楽曲からは予想つかないぐらいには手数が多くて盛り上がる。「Descent into madness」でスツールから立ち上がってシンバルを叩く様もそうだが、「LIVE-advanced」や「Dawn words falling」で見せる力強さがまた良い。特に右側のドラマーが「Peepshow」のイントロで歌いながら煽ってしまう様が何と言っても良い。正直可愛らしい。叩きながらたまに見せる快活な笑顔のカットが挿入される度、心の中で親指を立ててしまう。萌え袖が過ぎるつまらなそうな髭のおじさんとは実に好対照だ。
最終的に、褌ロングスカートのような衣装の髭のおじさんはあの場に於て一体何なのだ、という観点にぶち当たってしまう訳だが、あれはもうminus(-)のアーティストやアイコンとして見るべきでは無く、思わせ振りに据え置かれる鍵盤やシンセのラックと同様に、ステージ上に配置されて何となく音を出している楽器であり単なる装置だと捉えるのが宜しいのではないかと考える。インダストリアルでシャーマニックな、そしてたまに「B612」のような感傷的な楽曲のマスタートラックだ。マシンボイスのようなヴォーカルからして有機的な要素を見出そうとするべきではないのだ。念頭に置いておくのは髭だけぐらいが丁度良いのだ。

最近のライヴでは「Vietnam」「ASCENT」といったソフトバレエ時代の(遠藤遼一で無ければ歌えないヴォーカルラインでない)曲を復帰させているらしい。徐々に増えていけばいいなと思う。元々歪ませて加工していある「SANDLÖWE」なんかは今の藤井ヴォーカルでも巧くリプレース出来そうな気もしている。

 

 

動画は残念ながらオフィシャルトレイラーすら存在しないので『R』のダイジェストでお茶を濁しておく

再結成した頃の「Vietnam」

 

 

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