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wrecked (2017 Remastered Edition) / PIG

wrecked (2017 Remastered Edition) / PIG
この時世に一寸想像していなかった、まさかの旧作にして傑作の2017年最新リマスター。500枚限定CD『Compound Eye Sessions EP』で共作をしたMC Lord Of The FliesのレーベルARMALYTE INDUSTRIESからの、500枚限定12インチ販売及びbandcamp配信でのリリース。
曾てWAX TRAX!からリリースされたUS版『wrecked』をベースに、オリジナルである日本盤にのみ収録されていた「The Book Of Tequila」「Fuck Me I'm Sick」「Find It Fuck It Forget It (Regret It Mix)」を合わせ、またどちらにも未収録だった「Fuck Me I'm Sick (As Fuck)」と未発表「Strength Thru Submission」×2を盛り込んだ、デラックス版的な趣のある内容となっている。

この時代のレイモンド・ワッツはインダストリアルと個性との両面で最も均整が取れていた。今尚「My Sanctuary」や「Blades」(残念ながら日本盤より1分程度短い)、BUCK-TICKの2名がゲスト参加した「no one gets out of her alive」に於けるインダストリアルとオーケストラサンプルとの融合に依るアーティキュレーションは壮絶な圧力を齎すし、「Everything」ならびにF.X. Leach(アメリカのジャーナリストHunter S. Thompsonの著作「Better Than Sex: Confessions of a Political Junkie」での自身の変名)の詩を引用した「Fuck Me I'm Sick」の狂気の打ち込みと叩き込むような暴力性は色褪せず、「Save Me」「Silt」のメリハリのある空間表現は作曲家としての非凡さを端的に示している。レイモンドは個性も才能も充分にあるアーティストだったのだ。
しかし残念ながら、そしてどういう訳か、これが世間に広く支持されることは無かった。nothingとWAX TRAX!でリリースされたにも拘わらずだ。普通に読んで全く意味の判らないゴスで散文詩的な歌詞も遠因かとは思うが。若し此処でせめてKMFDM程度の認知がありライヴ活動の回数も重ねていれば界隈のアーティストにも広く認められ、その後の作風にも多少なりともインダストリアル観が引き継がれたのではなかろうか、と想像する。現在のPIGの怠さもあれはあれで一周回って一生懸命深掘りして出汁を味わうような面白さがあるが、本心として、『wrecked』が延長された世界線のPIGこそ我々が最も求めるべきPIGの姿であることは否定し難い。

ともあれ、恐らく誰も予想していなかったであろうこのリマスター版だ。音質も音圧も程良くアップデートされた。改めて評価しようではないか。

 

2019/01/20追記:
此処にbandcampのembedを貼っていたのだが、残念なことに音源そのものが非公開になってしまった。元々期間限定販売だったのか、限定数の12インチが在庫切れになった時点で撤収する契約だったのかは不明だが、目下入手する術は無くなってしまった。非常に惜しい話である。

 

ついでに『Compound Eye Sessions EP』。

 

 

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