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One, Alan Marshall (1969)

最初に聴いたのは数年前、youtubeで60年代マイナーサイケを掻き集めた動画(と言うか音源)を垂れ流していた時だと記憶している。当時のEUサイケと言えばフォーク臭の漂う何処か眠たげなサイケポップが多く、ブルースロックの範疇から完全にロックを舵を切ったジミヘンのようなタイプは寧ろ珍しいぐらいだった。と思う。当時の人間では無いから断言はとても出来ないが、少なくとも手軽に触れられるEUサイケは気怠さが強く、LSDどころかダウナー系の合成麻薬の方がしっくり来るのではなかろうかと云った風情だ。飲んだり吸ったりしたことないから知らんけど。

そんな中でこのOneだ。バンド名がOneで、1stアルバムもバンド名をその儘冠したセルフタイトル。その上ジャケットに至っては、行き着けの飲み屋で意気投合してソウルグループを結成した炭鉱夫とその仲間達、と云った風情のメンバー6名が歪んだパースで並んでいるだけで、何とも言えないダサさで充満している。フロントマンのアラン・マーシャルに至っては若いのに禿げ上がったような額が嫌でも目立ってしまい大層イケてない。エイドリアン・ブリューのそれよりひどい。そのような、
 
・アルバムタイトル無し
・バンド名が超シンプル
・重ねて知名度も無いマイナーぶり
 
……という地獄の捜索三重苦を背負ったこの一枚が、2016年にリマスタリングされて復刻していた情報に行き当たり、amazonで漸く掘り当てたアルバムmp3音源からセルCDへと辿り着いたのはつい最近のことだ。
ただ、この盤も今ひとつ不可解な箇所が多い。オリジナルの版権を持つFontanaとは違うレーベルであり、Fontanaのクレジットが一切入っていない。音源に関しても針ノイズこそ入ってはいないがLP起こしのような印象が拭えず、ボーナストラックに関して言えば状態の悪い7インチから直接収録したのが丸分かりな音質だ。マスターが存在しないか、或いは実は無許可の再販ではないかとの疑いが残る。バンドの歴史を可能な限り記したライナーノーツは立派なのだが。

扠措き、肝心の音楽はと言えば、これが如何にも60年代末~70年代UKロックらしいグルーヴ全開の演奏で大変に良い。殆どコードを押さえず単音のロングトーンを多用したオルガン、対して昭和の古い青春ドラマかと突っ込みたくなるようなド直球コードのホーンセクションで攻める。この思い切りが寧ろ味わい深い。ベースにしても「Don't Listen To Me」のようなアッパーから「Near The Bone」のようなブルースロック迄、アコギのカッティングの小気味良さと相俟ってグルーヴ満載だ。いっそサイケよりもレアグルーヴと言い張って取り上げた方が喰い付きが良いのでは、と思わせられる。「Stop Pulling And Pushing Me」に至っては、THE HEAVYの起源だ、と嘯いても割とすんなり受け入れられてしまうのではないかとすら感じる。

Oneのバンドメンバーを炭鉱夫とその仲間達と前述で譬えたが、当時それなりにキャリアは積んでいたメンバーではある。ヴォーカル/ギターその他楽器担当のアラン・マーシャルはOne以前のバンド・Happy Magazine(ドラムはその後イエスで名を馳せるアラン・ホワイトだった)でもリードヴォーカルであったし、バンド解散後、プログレ/ジャズ・ロックのZZEBRAの2nd『Panic』に参加もしている。ギター、オルガン、並びにメインアレンジを担当したボビー・サスはボビー・テンチと名乗り、数年後にはジェフ・ベック・グループのベーシストとして活躍する。一作目にして演奏力や表現力が玄人風情であるのも或る程度納得は出来よう。

剰え、オリジナルリリースの12インチのスリーヴには以下のようなキャプションが掲げられている。

All music is one. All men are equal. All is one.

相当スケールのでかい文言である。その意気込みや売り出しへの期待感たるやかなりのものであったろうと想像させる。唯一無二・Oneたるオリジナリティ溢れる世界を存分に表現し尽すべく現れた期待のスーパーバンドであったのだ。

しかし、判る人にはすぐ判ると思われるが、あろうことか実は殆どの収録曲が黒人フォークの旗手、リッチー・ヘヴンスのカヴァーだ。『Somethin' Else Again』(1967年)から「Don't Listen To Me」「Run, Shaker Life」の2曲、『Richard P. Havens 1983』(1968年)から「Cautiously」「Stop Pulling And Pushing Me」の2曲、復刻版に追加収録されたフランス盤7インチからの「How Much Do You Know」に至ってはフルオケの原曲(バロック曲だがFrançois de Boisvalléeという同時代の作曲家に依る)「Adagio Royal」のカヴァーだ。残る1曲「Near The Bone」が唯一のオリジナルで、アラン・マーシャルとボビー・サスの共作となる。こうなるともう、一体何がOneの目的だったのか、一体何を以てこのアルバムを作ろうとの動機になったのかがさっぱり見えてこない。いざ作品背景を調べ尽して揚々と綴ろうとした途端に途方に暮れてしまった私の気持も多少は伝われ。

Oneはコンセプトがよく判らないので売れなかっただけという訳でも無く、バンドメンバー各自がセッションミュージシャンとして掛け持ちしていた影響で活動は継続されず、自然消滅的に無くなったというのが有力説らしい。当時のUKのミュージシャンやバンドは樹形図を作ると意外な人が意外な処でつながっていた、なんてことがざらにある程度にはカジュアルに参加と脱退を繰り返すのが一般的であった故、まあ恐らくはその通りなのであろう。
とは言え良いものは良いので、取り敢えず動画でも何でもいいからサイケ好き・70年代好きなら一度は聴いてみよう。なかなか良い雰囲気に飲まれること請け合いだ。

 

 

この動画(音源)に辿り着いたことで、2016年に復刻されていたことを知った。

18分近くに及ぶ「Run, Shaker Life」。アルバムの中では最もサイケっぽい曲。辛うじてヴォーカルだけが。ワンコード進行のジャムセッションにフルートが入っているので、イアン・ウォーレス在籍時のクリムゾンにサイケっぽい声を雰囲気程度に足しました的な風情。

 

リッチー・ヘヴンスのオリジナル×3曲。「Stop Pulling And Pushing Me」に関してはOneのカヴァーとそれほど変わらず。

amazonでは何故かレーベル名違いで2つある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01F4SLN3K/
https://www.amazon.co.jp/dp/B01EZGAPQS/

 
 
 
 
 

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