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A Night In Tunisia / Art Blakey & The Jazz Messengers

A Night In Tunisia / Art Blakey & The Jazz Messengers
デイジー・ガレスピーの1942年作「A Night In Tunisia」は有名無名織り交ぜて実に様々なアーティストが演奏しているけども、格好良さと構成のアグレッシヴさで言えばブレイキー版がこの世で最高だと思ってる。

本件は1961年に録音されたブルーノート盤では無く、1957年4月に録音されたVik盤の方。前者は後期版故のクオリティの高いステレオ録音(ドラムのリバーブの感触が如何にもBNらしい)で、アフロ・キューバン感の強いアレンジ。BPMが速過ぎる故にリー・モーガンのトランペットが些かもたっている節が否めないが、黄金期とも言われるパーソネルが揃った故の、より熟練の域に達したアグレッシヴな演奏に関しては今更説明する迄も無い。
初期版の後者(本件)は、アレンジは後年のように完全に固まりきっていない頃のモノラル録音。この時期に好んで使い回されたブレイキーのドラムパターンから始まるので馴染み易いが、固定されたパターンを叩くパーカッションがシェイカー以外に無いのでリズム的なばらつきが目立つ。ピアニストのソロは拙さと躊躇が目立ち、御世辞にも良い按配の演奏とは言えない(正式テイクもオルタネートテイクも同様なので、ソロプレイに於ける独自のイディオムを持っていなかったのだろう)。しかし、前者よりBPMが遅めである為か全体を通してアンサンブルの具合が良く、特にトランペット、アルト&テナーサックスの三管の威力が大変に強力。アタックが強く一音一音の発音が明確なビル・ハードマンのトランペットや、流麗なジョニー・グリフィンのテナー、そしてジャッキー・マクリーンのアルトを含めた二管とピアノが揃って主題を支えるシークエンスの厚みは段違いだ。
同じ楽曲であろうと時期もパーソネルも違うテイクなので、どちらが良いと采配を挙げたりはせずにそれぞれの良さを具に聴き入るべきなのだが、Vik版の「チュニジアの夜」の方が良い、という意見があるのは充分に首肯出来る。他の曲でも、例えば「Theory Of Art」「Evans」でも判る通り、全体的にホーンセクションが中音域でのプレイで固めている点もまとまりの良さを感じる一因だろうと感じる。メッセンジャーズ不遇の時期とは思えない。

「A Night In Tunisia」自体は元々ブレイキーが得意としていた曲で、古くは1954年の『A Night At Birdland vol.1』でも演奏されている。冒頭のパーカッションのアンサンブルが付き、尚且つブレイキー得意のドラムパターンを軸にした構成は元々この曲向けでは無く、「Avila And Tequila」で使われていた様子。1955年の『At The Cafe Bohemia』で、後の「A Night In Tunisia」とほぼ同じ形のイントロが確認出来る。更に後、本作と同年にリリースされた『Ritual』の表題曲として、ほぼパーカッションのみの構成で繰り広げられる約10分の長尺トラックとなっていく。

 

どうでもいいけど、雰囲気やコードが近年のなんかの曲に似てるなー、と暫く考えたが思い付かず、後になって、菅野よう子のカウボーイビバップ「Rush」だと思い当たる。まあ確かにビバップだしな。バード(チャーリー・パーカー)が会話の引き合いに出されるぐらいには。

 

1957年版。

貴重な1958年の映像。『Moanin'』の面子。パターンの組み方は「ritual」に近く、ボビー・ティモンズのピアノは既に1962年版と同様。一番最後でシンバルを叩き過ぎてスタンド下がっちゃうの最高。

上の動画と同じパターンのイントロを持つ『At The Cafe Bohemia』の「Avila And Tequila」。ピアノはホレス・シルバー。

 

「Rush」ライヴ版。音楽だけで無く本編も非常に良い作品だったなあ。

 

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