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Orgy In Rhythm / Art Blakey

Orgy In Rhythm / Art Blakey
『Moanin'』に至る以前、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ発展途上の時期だった1957年の作品。結構前に本家ブルーノートから限定で1&2のセットがCD化されていたらしいけど、現在微妙にプレミアが付いていて手を出しにくいので、取り敢えず8枚組の廉価盤『The Complete Blue Note Collection Part One 1954-1957』で茶を濁す(他の物はLP起こしでクオリティが低いらしいので要注意)。なんでこんなセットが売られているのかと言えば、どうも実演翌年から50年経過して、著作隣接権が切れたかららしい。原盤権と演奏権な。だが作曲者を見る限りでは没後50年経過して出版権が切れた音源はほぼ無い。ブレイキーやデイジー・ガレスピーの死亡年に至って1990年、レイ・ブライアントに至っては2011年。割と普通にひっぱたかれる事案だと思うんだけど、どうなんだ。

で、『Orgy In Rhythm』。ハードバップ隆盛の1950年代にアフロキューバンのリズムを積極的に持ち込んできた一人だが、直前のリリースである『Drum Suite』で手応えを得たのか、更にドラマーならではの観点に依りほぼ全編に亙ってアフリカ民族音楽のコンテクストを導入した野心溢れる作品。ただまあジャズに対して積極的に持ち込んでいきたい方針では無く、ドラム好きのプロデューサー共々、落雷(日本では専らナイアガラ)と呼ばれたブレイキーの乱れ打ちを純然たる長尺プレイとして別途表現したかったのが実際のところだろうと思われる。
事実、ハードバップ然とした楽曲はおろかスタンダードすら皆無であり、ブルーノートからのリリースとは思えないぐらいジャズ感は無い。辛うじてそうであるのは「Buhaina Chant」の中盤、「Toffi」の前半、「Abdallah's Delight」の最初と最後ぐらいで、「Come Out and Meet Me Tonight」は完全にアフロキューバン、「Split Skins」や「Amuck」に至っては打楽器しか無い。ドラムとパーカッションのインタープレイを軸に据え、支柱の一部程度にピアノやアフリカ的なヴォーカリゼーション及びフルートを載せるといった思い切った構造で、イディオムと言うか西洋感を引き留めている唯一の要素はピアノだけ。1曲の長さも余裕で8分とか10分とかある。そしてブルーノートでは最初のステレオ録音。当時としてはかなり型破りな実験作だったのではなかろうか。ただ機材面も含め純然たるアフリカンスタンダードへの肉薄としては、これより5年後、1962年の『The African Beat』まで持ち越しになる訳だが。
ポリリズムを軸としたドラム/パーカッションのアンサンブルはそれだけでも熱量や気持良さが段違いで、それがこうした形ともなると、ジャズの白熱した勢いのみならずロックの力学にも通ずるものがある。性質上昔から大分聴く人を選んできた作品だろうけど、それでも、音楽が何を差し措いても好きだという人にはこの凄まじさに触れてほしいと思う次第。

 

ちなみにピアノはレイ・ブライアント。ブライアント自身はゴスペルやブギー寄りの作風を得意としているが、当時の立ち位置はまだコンポーザー兼ピアニストであったこともあり、コンセプトを鑑みて単純なコードの反復に徹することも出来る作曲家としての器用さが巧く生きているなと感じた。
前作『Drum Suite』で「Cubano Chant」が自作曲のスマッシュヒットとなり、自身のトリオを結成してアーティスト志向に変わっていき、密かな名盤『Ray Bryant Trio』がPrestigeからリリースされたのも丁度この1957年。他にもマイルス・デイヴィスが大編成の『Miles Ahead』を作り、ジョン・コルトレーンが『Blue Train』で何やら覚醒したり、そしてこの『Orgy In Rhythm』が出たりと、爛熟したハードバップを軸として界隈にも様々な動きがあった面白い時期だったと言える。

 

 

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