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on taking things apart / Stephen Cornford and Ben Gwilliam

on taking things apart / Stephen Cornford and Ben Gwilliam
テープレコーダーをいじらせたら右に出る者は居ないと言っていい(但し俺比)、スティーヴン・コーンフォードの新作。リリースから一寸時間が経ってしまったものの、相変わらず素晴らしいので書く。
ノイズ/エクスペリメンタルによくある話ながら、例によって余りにも情報が無いのでレーベルページを頼ってみると、曰くGrundig TK5を解体しながらテープに録音していった作品とのこと。1955年製のオープンリールのテープレコーダーだが、ググッてみるとそこそこ結果件数があり、開けた画像(こんなのやこんなの)やリペア記事まであったりするので、欧州方面では割とメジャーだったらしい。基板など無く、現在とは比較にならない程でかい電子パーツをプリミティヴにつなぎ合わせたフルアナログな内部構造を見るだけでも確かに増幅の上「発音」させられる箇所は少なくなさそう、という気がする。

コーンフォード作品に大凡共通する特長として、非常に繊細な音を探り当てては具に拾い上げるスタンスにある。唯一の公式記述にもある通り、本作も例外では無く、リールやキャプスタンやピンチローラーの駆動音を始め、モーターの回転や内部機構の動作音、筐体を伝う駆動音のフィードバックとドローン、スプリングを加熱冷却させた際の収縮で発する音など、オブジェクトもしくはインスタレーションとした対象の細部にまで入り込んで得られた数々の音を拾い上げてはアンプリファイしている。音量の増幅は加工の一手段とも言えるが、得られた音そのものに対しての後加工は一切せず、筐体その物から得られる残響をもフルオケのコンサートホールの残響と同じように利用しつつ、微細な発音から観察し得る音の粒子や明確なフォルムがオブジェクトに内在している様を克明に呈示させている。未知であったテクスチャーの味わい深さと空間的表現が実に良く「発見」され、「演奏」されていると言い換えても良い。

これは端的に言い表せば、微小な対象をマクロレンズで覗いた際の別世界のような印象と同じ性質だと言って良いだろう。例えば壁面一帯に生した苔を至近距離で眺めた際の鬱蒼とした情景、例えばグラスに注がれた炭酸の気泡の一つ一つ。神は細部に宿る、と云う成句は主に建築に於て使われるが、こうしたエクスペリメンタル/フィールドレコーディングに対してその儘当て嵌めて何の遜色も無い。純粋に音を楽しめる歓びも斯くや。

 

下記レーベルページにmp3サンプルあり。
wm46: stephen cornford and ben gwilliam on taking things apart

 
2020-12-30追記:bandcampでの音源配信が開始されていた。廃盤品を入手して聴く機会が無いからロスレス配信してくれ、と本人に直接要望してから約二年、漸くやってくれた。是非とも購入して聴いてみてほしい。
https://stephencornford.bandcamp.com/

 

 

 

TK5を実際に再生させている動画。トレブルも付いてるみたい。

 

 

 

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