in•ter a•li•a / AT THE DRIVE IN
AT THE DRIVE IN十数年振りの復活作『inter alia』。脱退したジム・ワード以外のATDIメンバー全員の同意でオマーがプロデュースに回ったとのことで、オマーの多作っぷりからすると畢竟ソロをATDIでやった程度にしかならないのではないか、と要らん心配をしたものだが、ああこれは確かに好い具合にATDIだねと言える立派な出来になっていて大分好感を持った。全力疾走の41分。
往年のオルタナ/ポストハードコアらしいテンションのくそ高さやIQ低そうな感じ(実際そんなことは無いが)は、アドリブやインプロで振り回さないシンプルなギター、手数の多さで奇を衒わないドラムで突っ走る辺りに顕著だろう。インプロ要素を排した3~4分程度の曲としてしっかり構築されていることに加えて、例えば「TILTING AT THE UNIVENDOR」のサビのようなショボいリフ(これはIQ低そうと言っていい)でも強引に押し切ってしまう勢いは特にATDIらしい。とりわけ、なかんずく、とは巧い命名をしたもんだ。
尤もそれだけで無く、節々にThe Mars Volta以降で培われた、ノイズジェネレーターとしてのギターワークやオマー独特の暑苦しいダブが随所に鏤められていたりするので、ヴォルタ派としても全然飽きない。単純に曲調が「GHOST-TAPE NO.9」や「CALL BROKEN ARROW」なんかはヴォルタっぽくもあるので尚更に。
若干落ち着いたと感じられる面は、主にセドリック・ビクスラーの今の歳で難無く出せる声域に絞っている影響だと思われる。威勢が足りない、丸くなった、と当時のATDIに影響を受けた人々は捉えるかも知れないが、寧ろこれは大いにプラス要因となっているだろう。いやあの人、ライヴだと勢いだけで歌うから、ちょっとでも高域になると控えめに言ってドヘタじゃないですか。ヴォルタ時代は特に無理筋なメロが多かったので異論は認めるけど。ヴォルタの時のように明らかに無茶な音程の上下が無いということは、その分だけ実際のライヴでも無理無く本領を発揮出来る訳で、スタジオ盤その儘により良くなるのでは、と感じた次第。
そう云う訳で、取り敢えず最近のライヴ動画を見てみたところ、随分良かった。なんだー良いじゃないかー。9月の来日公演のチケット買っておけば良かった。